第12回 (2009年度)・谷口維紹先生 (東大)

武石 昭一郎・松崎 芙美子(博士課程3年)

第12回目となったSSSですが、今回光栄にもこのセミナーの担当をさせていただきました。これまでと同様に学生のみなさんに「今一番御講演を聴いてみたい先生」というアンケートをとった結果、東京大学の谷口維紹先生に御講演をお願いすることになりました。谷口先生は免疫学の大御所であり、学部生の頃から教科書などでそのお名前は存じあげていました。私にとってそのような雲の上の存在の先生に直接御講演をお願いすることになるとは夢にも思っていませんでしたし、御講演のお願いのメールを送るだけでもとても緊張しました。それだけに「喜んで引き受けさせていただきます。」というお返事のメールを見た瞬間は忘れがたく、今でもそのときの興奮を覚えています。

御講演は先生の生い立ちから先月publishされたばかりの論文の内容に至るまで本当に盛りだくさんで、御講演時間の90分があっという間に過ぎてしまいました。私がSSSに参加したのは今回で4回目ですが、どの先生の言葉にも共通しているのが「科学を楽しみなさい。」ということです。実際、今回の谷口先生の御講演を拝聴していても、先生ご自身が科学をとても楽しんでいらっしゃるということがひしひしと伝わってきました。質疑応答の時間も一つ一つの質問にとても親身にお答えくださり、大変感動しました。「どれもいい質問ばかりだった。」と何度も笑顔でおっしゃられ、こちらまで嬉しくなりました。福岡の滞在時間がわずか4時間弱というハードスケジュールでしたが、谷口先生から学んだことは非常に多かったと思います。

今回SSSの担当をさせていただいたことで、谷口先生のような著名な先生と身近に接する幸運に恵まれました。次回以降の担当者の方にも是非この興奮を味わっていただきたいと思います。最後になりましたが、今回お忙しい中、日帰りで福岡までお越し下さった谷口先生、そしてSSSの開催をサポートして下さった関係者の皆様、本当にありがとうございました。

(武石 昭一郎)

参加していただいた学生および先生方より御感想をいただきましたので、以下に紹介させていただきます。

現在の免疫学における第一線のお話を聞く事ができ、大変面白いセミナーでした。毎回感じることですが、SSSでは普段なかなか聴くことのできない一流の先生方と直接討論でき、自分の将来像を考える上でとても勉強になります。
セミナーでは科学的な内容の面白さもさることながら、研究を進めて行く上での心得も勉強させて頂くことができました。サイエンスとしての研究と論文として形をまとめるための研究のさじ加減や、銀杏の大木を例に「小さな志を持つと何もできないが、大きな志を持つからこそ何かができる」とおっしゃっていたのが印象的でした。
これからも谷口先生のお言葉を心に抱きながら、研究生活を楽しんでいきたいと思います。

非常にご多忙の中、御講演して頂きありがとうございました。
御講演では生い立ちから、ごく最近の素晴らしい業績まで聴かせていただき、非常に有意義な時間を過ごせました。
今回のセミナーでも研究の話以外のSSSでしか聴けないようなお話を伺うことが出来ました。まずは科学を楽しむこと、周りと小さな競争をするのではなく大志を抱くこと、楽観的であること、何にでも手を広げすぎるのではなくやるべきことを絞ることなど、他にも多くの事を学ぶことが出来ました。これらのことは今後研究者として道を間違わないためにも、深く胸に刻んでいきたいと思います。

今回の御講演の中で一番心に残った言葉は「年齢や地位に関係なく、国際的に開かれたサイエンスを楽しみながらやる。」というものでした。また、「いつかは晴れの日が来る。志をイチョウのように高く。」という言葉を胸にこれからも楽しみながら研究を続けていきたいと思いました。

御講演では、先生の原点であるIFN-βのクローニングからIRFの発見、そしてつい先日Nature誌に発表された細胞内核酸センサーについてなど、この場では書き尽くせないほどボリュームたっぷりにお話ししていただきました。御講演で最も印象に残ったのは、(素晴らしい研究はもちろんですが)研究を臨床治療に応用するという強い意気込みです。基礎研究者は自分の好きな研究に没頭するあまり、社会への貢献という気持ちを忘れかけている人々を時に見かけるような気がします。しかし、谷口先生は研究もそしてその応用もバランス良くやられ、そんな先生を尊敬し私もそんな研究者になりたいと思いました。また、私達学生の質問に対しても敬意を払う紳士的な態度も参考にしたいと思います。最後に、谷口先生お越し頂きまして本当にありがとうございました。

演者の先生方のご温情で成り立っているSSSですが、今回も谷口維紹先生のご厚意を頂戴し、深く感謝しております。谷口先生にあっては、大変お忙しい中を縫って福岡までお越し下さった上、通常の講演では聴けないようなお話をフランクにして下さり、大変感激致しました。先生の生い立ちを初めて伺いましたが、必ずしも勉強に適した環境でお育ちになったというわけではなかったにも関わらず、現在のような業績を築いていらっしゃるのが、励みになりました。また、研究以外の事柄にも、幅広い興味と知識をお持ちなのに驚きました。専門分野だけでなく、周辺知識も大切だという恩師から受けた教育を大切にしていらっしゃったからなのかと想像し、自分も幅広い知識と視野を持たなければと思うのと同時に、現在の恩師の教育をもっと享受しなければと自らを鼓舞した次第です。基礎免疫研究にだけではなく、社会への還元にまで多大な貢献をされている先生の域に達するなど想像もつかないのですが、今後は先生の姿を目標とすることで、銀杏の木のように自分の可能性を伸ばしていこうと思います。

ご講演の内容は、先生の生い立ちから始まって、留学先でのWeissmann先生との出会い、IFN-βのクローニングから最新の研究内容まで幅広く、非常に充実したものでした。谷口先生も非常にactiveで、大きな理想を持っていて、また独自の戦略を持って研究されていることなど、今までSSSに来て下さった先生方とおっしゃることは同じで、やはり1流の先生方には1流になるべき理由があるのだな、と思いました。我々の質問に「興味はあるけれど、時間も人も限られているからやってない」とはっきりおっしゃったのが印象的でした。またひとつ目標にするべき先生に出会えたSSSでした。

谷口先生の科学に対する真摯な姿勢、教育に対する考え方を聞いていると、惹きこまれ、言葉で表せないような熱い想いが湧きあがってくる。特に心に残った言葉が二つある。
一つは、「僕ら科学者は、何もすぐに社会のやくにたつような研究をやらなければいけないわけではない。ただ忘れてはいけないことは、国民の皆さんが一生懸命働いたお金を使ってさせてもらっていること。そこに感謝をしなければいけない。」という言葉だ。僕はただ生命現象の不思議さに向き合いたいというだけなのかもしれない。ただそれでも、そんな事をさせて頂いているのも、他の周りの人が支えていてくれるからなのだ。それを社会にどう還元するか云々よりもその気持ちを常に持つこと自体が大事なのだと感じる。日々の実験生活の中でふと忘れがちな大切な言葉を頂いた思いだ。
2つめは、谷口先生の大学院時代のこと。「大学院時代の卒業試験は、自分の研究分野のことというよりもむしろ、熱力学であるとか、科学者として身につけておくべきことが問われた。」という事だ。考えてみると、谷口先生のオーラはこの言葉に凝縮されているような気がした。科学者である以上一般常識、生命現象は勿論のこと、政治・経済その他のたくさんの事象に深い考察を加えられなければならないと思う。日々の実験に追われていると、どうしても疎かにしてしまう傾向があるこの言葉も、しっかりと頭に残しておかなければならないと思う。

SSSでは普段なかなかお話をお聞きする事のできないような、偉大な先生方のお話を聞く機会を得られるということで、いつもとても楽しみにしています。今回のSSSでも普段なら遠くからご講演を拝聴させていただいているような谷口先生のお話を間近でお聞きすることができ、とても有意義な時間を過ごさせていただきました。
研究を志す私達にとって道しるべとなるような先生ご自身の研究人生のお話に始まり、発表されたばかりの最新の研究のお話までご講演いただき、とても濃密でエキサイティングなひとときでした。その中でも、「自分が明らかにすべきと考える中心命題を解明するためには、その際に出てくる枝葉を見ていてはいけない。何をするかも大事ではあるが、しないということを選択するのも大事なのだ」というお話がとても印象に残り、研究の進め方を考える際に肝に銘じておきたいと思いました。
中心命題に挑み続け、しかもその中で最先端を走り続けていらっしゃる谷口先生。今回のご講演はこれからの私の研究人生にとって重要なものを教えていただいたように思います。

谷口先生の御講演をはじめて拝聴させていただきましたが、「自然免疫とは何たるか」から最新の研究まで幅広く丁寧にお話ししていただき、非常に分かりやすく有意義な時間が過ごせました。スライドの端々に出てくる仕事をされた方の写真や紹介は、谷口先生のラボへの愛情のようなものが感じられ、ほほえましかったです。SSSを通して、一流の先生方に接し、共通して感じることは先生方は皆エネルギーに満ち溢れていて、その源はサイエンスへの情熱と飽くなき探求心ということです。どんなに業績をあげて偉くなっても、初心を忘れず科学と正面から向き合い、常に楽しんでサイエンスをする、そんなメッセージを忘れずにこれからも精進していきたいです。

九州大学 生体防御医学研究所
分子発現制御学分野
武石 昭一郎・松崎 芙美子(博士課程3年)