第15回 (2012年度) 井村裕夫先生 (先端医療振興財団)
- HOME
- Student-selected seminar
- 第15回 (2012年度) 井村裕夫先生 (先端医療振興財団)
幡野 敦・沖田 康孝・山内 隆好(博士課程3年)
15回目を迎えたSSSは学生へのアンケートの結果、井村裕夫先生にご講演をお願いすることになりました。非常にお忙しい中、九州大学にてご講演をしていただけたことは大変ありがたく九州大学の学生にとって貴重な時間となったと思います。
今回実行委員を担当するにあたり、井村先生のお話を聞くことができる期待と私たち学生が先生にご講演を依頼して本当にいいのだろうかという不安の入り混じった日々を過ごしてきました。しかしご講演の冒頭で、今の日本の臨床研究が直面している危機を何とか変えていきたいという思いからSSSでのご講演を決められたと聞いて、この講演を実現できたことを素直に喜ぶことができ改めてSSSの意義を実感いたしました。
ご講演では井村先生が研究を始めた時代の話から科学技術政策として取り組まれたこと、そして未来の臨床研究と医療についてと時代の変遷を感じるお話しでした。その中で先生が常に感じられていたPOR(患者思考型研究)の重要性を知ることができました。特に次世代シークエンサーの発展とともに個人のゲノムが簡単に読める時代が到来しつつある今、先生が示された未来の医療のビジョンは研究者としてだけでなく一人の人間として大変興味深く感じました。
会食の席では私たち学生の遠慮のなく矢継ぎ早に飛び出す質問に対し、先生が一つ一つ丁寧に答えられているのが大変印象的でした。ゆっくり食事を楽しんでいただきたい思いもあったのですが、政策や研究の方向を決める会議のお話しはとても新鮮でついいろいろと伺ってみたくなってしまいました。また移動の時間に進化に対する疑問や考えをお話ししていただいたことは大変勉強になりましたし、科学について議論する時間はやはり何より楽しい時間でした。
SSSは講演される先生から学生へ研究者にとって芯となるようなメッセージを発信していただく場と考えています。今回井村先生が発せられた強いメッセージが聴衆の方にとって啐啄のタイミングであればと思います。
最後に学生からの突然のお願いにお応えいただいたことに改めてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。
(幡野 敦)
井村先生、大変お忙しい中福岡までいらっしゃっていただき、誠にありがとうございました。
自分が井村先生を知ったのは、実験医学の進化医学を勧められたときでした。一度読ませていただいたときの衝撃は忘れられません。自分には、生命科学はどのような機構で(How)を探求するものであって、意義(Why)を探すものではないという考えがあったからでした。でも先生は、時代、疾患、生体物質の性質など、幅広い視点から意義を検証されていました。本当に興奮を誘うものでしたし、どんな人がこんな文章を書くのだろうととても興味を持たせていただきました。
そんな井村先生をSSSに呼びたいという声があがり、実際にお目にかかれることができて本当に嬉しかったです。一つ一つに丁寧に事実を挙げながら応対している先生の姿や、年齢を感じさせないほど鋭い議論、品のある立ち振る舞いは正直に格好よかったです。その中でも、過去ではなく未来を良くしたいという想いには、感銘をうけました。自分も研究を始めた頃の熱い想いを思い出させていただきました。
最後に、一番印象深かったことを書かせていただきます。懇親会での一幕です。「いろんなポストを経験されてきた先生ですが、いつが一番楽しかったですか?」という質問に対して、生命科学にしっかり向き合えた時かなと研究のことを物凄く活き活きと話されていました。井村先生も、研究が大好きなんだな〜と自分も嬉しくなりました。
井村先生、今回は誠にありがとうございました。先生をお呼びできて本当に良かったです。自分も先生のように年輪を重ねていきたいと思いました。少しでも近づけるよう今自分にできることを頑張りたいと思います。いつまでもお元気でいて下さい。また、お目にかかれる日を楽しみにしています。
(沖田 康孝)
今回は、滅多にない貴重な機会を与えて下さり、本当にありがとうございました。当日はわざわざ福岡までいらして下さったのに、あいにくの悪天候で新幹線が遅れていしまい、実行委員として大変申し訳なく思いましたが、いざご講演が始まるとそんな気持ちが吹き飛んでしまいました。日本では特に観察研究、介入研究を支えるための専門家や組織、さらにそれを支えるシステムが未熟であることが理解できました。ご講演中の先生の、「そろそろ与えられた時間が…」というお言葉には耳を疑ってしまいました。90分間の講演というものがあれほど短く感じたのは初めてのことでした。
夜遅くまで快くお付き合いいただいた懇親会では、先生がポストゲノム時代の日本を先導され、それによってナショナルバイオリソースプロジェクトをはじめとした、われわれ研究者にとって非常に有益な環境が整備されてきたんだなと実感することができました。また、我々の質問に対する1つ1つのご回答は、先生の物事に対する視点(T字型の視点)を勉強するとてもいい機会となりました。
私も、先生がおっしゃったような夢の実現に役立つようなことにこれから取り組んでいきたいと考えています。いい実験結果が出て、何らかの形でご報告ができれば…と今回の出会いを励みにしつつ頑張っていきたいと思います。最後にはご丁寧に握手までしていただき、ありがとうございました。
(山内 隆好)
参加していただいた学生および先生方より御感想をいただきましたので、以下に紹介させていただきます。
井村先生の「臨床研究の未来の動向」のセミナーを拝聴して特に感じたのが、先生の知識の広さと深さです。例えていらっしゃったのが、研究者は「T」型であれです。「T」型とはその字の格好の通り、研究知識は、広くそして自分の専門分野に関しては深くということです。先生のご専門は、ホルモンを中心とした内科学にあるにも関わらず、現在の最先端技術(次世代シークエンサーやX線自由電子レーザーなどなど)に関しても詳しく、本当にたくさん勉強されているのだと感じました。また、そのお姿から本当に医学と科学を愛していらっしゃるのだなと感激しました。私も、その情熱を忘れることなく研究を続けていければと思います。
今回、大変ご多忙の中SSSにお越しいただきありがとうございました。井村先生は、臨床研究者としても素晴らしい方ですが、それ以上に日本の科学政策に対して今も続いてご活躍なさっている大変バイタリティのある方と思いました。ご講演では、自身の研究者としての歩から、日本の科学や医療政策に携わっていく中での考えをお話ししていだだき、色々考えさせられるものでした。そしてなによりも、そうした考えを裏付けるための臨床医学にとどまらない知識や考察の鋭さに感銘いたしました。私自身の、科学や医療というものの見方を変えるような経験でした。同時に、そうした視野を得るためにはもっと自分の専門的知識を深め、そしてあらゆる事柄に対する感性を身につけることが重要かと思いました。
飲み会の席で直接お話するのは緊張しておりましたが、どんな質問に対しても鋭い考察を加えて丁寧に回答していただけたのが大変印象的でした。まだまだ未熟ですので、先生から受けた様々な刺激を糧に、もっと研究者としても一人の人間としても精進して行かなくてはならないと思いました。大変貴重なご機会をありがとうございます。
乳幼児死亡率の減少、高齢化社会の急速な進行、その中で医療は大きな変革が求められていると強く感じています。先制医療、QOLを重視した医療、再生医療。日本の医療改革を長年に渡って先導してきた井村先生のお示しされたビジョンは、どれも「なるほど。」と思わされるだけではなく、そこには生命への畏敬の念が垣間みられ、私はとても感銘を受けました。また答えにくいものも数多くあっただろうと思う、我々の質問に対しても、一つ一つ丁寧に、深い考察でもって答えて下さるお姿に、人として目指すべき道を示して頂いた思いです。お忙しい中、本当にありがとうございました。
井村先生、お足元の悪い中福岡までいらしていただきありがとうございました。
今までのSSSの演者の方とは違うから、と前置きをされていましたが、臨床研究の歴史からご自身の研究へと至る流れや、今後の臨床研究のあるべき姿など、1時間半に渡りまるで一続きの物語のようにお話をされていたのが印象的でした。その後の食事会では、科学行政にかかわる面もざっくばらんにお話しいただき、こちらも普段の研究の現場からは見えてこないものでしたので、非常に楽しく拝聴させていただきました。基礎から臨床へ、臨床から基礎へと、研究が双方向的にあるべきだと再認識することができました。重ねて、今回のご講演、ありがとうございました。
基礎研究の研究者の先生にお越しいただく機会が多かったSSSに、今回は臨床研究者であり研究政策に尽力されている井村先生にお越しいただきお話を聞けたことは、これまでにはなかった新しい刺激を受けることが出来ました。特に日本の研究を指揮していらっしゃる井村先生のお話は、私たちにとってあまりにスケールの大きなことばかりで驚くことばかりでしたが、私たち研究者がおかれている現状と求められているものを知り、考える良い機会となりました。また、井村先生は私たちが孫の年齢だとおっしゃっていましたが、そんなことを感じられないほどに若々しく日本の研究の未来について語っていらっしゃるお姿に感銘を受けました。今後もますます日本の研究の先導者としてご活躍されることと思います。このようなエネルギーあふれる井村先生とお話しできたことは私たちにとって大きな刺激であり今後の糧としていきたいと思います。お忙しい中、貴重なお話を聞かせていただき本当にありがとう御座いました。
臨床、研究、政治など全てを経験し俯瞰的立場から見渡す立場から貴重な話を聞けてとても良かったです。近年の基礎研究の役割として、臨床への貢献、ということが重視される傾向であることを最近はよく感じていましたが、今回のSSSでは臨床研究からの視点で基礎研究に何が求められているか考えるいい契機になりました。特に生活習慣とNCDの発症との架け橋としてエピゲノムがより注目されてきているという話、また先制医療において妊娠中~出生時までの母体環境が重要そうであるが、未開拓の分野であること、そして創薬の観点がこれまで以上に重視されてきていることが印象的でした。
「トランスレ-ショナルな医学を」というお話に強く共感しました。臨床、基礎、社会医学がそれぞれに細分化した専門分野を持つ現代に最も強く求められる概念ではないかと思います。深く根を下ろした専門性を持つ者同士が垣根を超えた視点から積み上げていく対話の中に、各々の領域が抱える様々な課題を解決するヒントが転がっているのではないかと感じました。
また、80歳というお歳を超えてなお、先制医療をはじめとした様々なvisionを持って前進されていらっしゃるお姿が大変印象的でした。先生が選び、語る言葉一つ一つにこれまでの人生の中で培われた豊かな世界が垣間見えるようで、自分もこんな風に年を重ねていけたらと思いました。
井村先生、このたびはSSSにお越しいただきありがとうございました。セミナーとその後の懇親会において興味深いお話を沢山お聞きすることができました。未来の医療がどうなるか、現在ある問題点、予想される問題点、解決策などわかりやすくお話され、とても勉強になりました。井村先生のお話する姿を見て、幅広い知識を持つこととそれに基づく考察をする重要性というものを改めて再認識することができました。今回触れることのできた井村先生の視点を持てるよう、今後の研究にも励みたいと思います。
今回のSSSでは、医学研究の歴史から始まりその未来についてまで、井村先生の非常に深い洞察と俯瞰的な視点からのお話を聴くことができました。先生のお話を通じて、今後の医学研究が、そして自分が進んでいくべき未来について真剣に考えることが出来ました。質疑応答の際には、私たちの質問に対して真摯にお答えして下さる姿に大変感銘を受けた事を良くおびえています。また、飲み会の席では、日本と世界を比較しながら、科学界の現状やその問題点を分かりやすく説明して下さり、非常に有意義な時間を過ごす事ができました。今回感じた様々な事を今後の研究人生に生かしていきたいと思っております。
非常にご多忙のなか福岡にお越しいただき本当にありがとうございました。
専ら基礎研究に従事しているため、臨床研究がテーマである今回の御講演をちゃんと理解できるかどうか当初は不安もありましたが、井村先生のわかりやすく興味深いお話のおかげで、これからの医療について考える絶好の機会となりました。懇親会でも先生の歩んでこられた軌跡から普段はなかなか耳にすることのできない医療や研究政策のお話を直に聞くことができ、非常に有意義な時間を過ごすことができました。
御講演と懇親会を通じて、先生の医学だけにとどまらない幅広い知識や教養とこれからの研究や医療に対する思いを感じることができました。最後に、貴重な時間を割いていただき、改めて深く感謝申し上げます。
このたびはご講演いただき大変ありがたく、嬉しい限りです。井村先生の幅広く、かつ深い見識に感銘を受け、目が醒める思いでした。基礎医学と臨床医学とその狭間を、時代を追って思い出しながらのように語られる先生のお話は、医学研究界を生きた証人としての説得力に満ちたことばとして聴いてとることができ、そしてあらためて、研究の世界の魅力に引き込まれる思いです。過去について語られた内容もさることながら、医学の未来について先生の考察もまた我々をインスパイアするものが大いにありました。
我々は自身の専門に限った研究や学習に努めがちですが、ときには大局的な視点から、医学、科学の世界の潮流に思いをはせ、自分の向かうべきビジョンを描いて、そのうえで日々の研究に意味づけを行うことも大切だと感じました。先生のご講演を機に、自分が科学の世界の中でどのような位置づけで、どこへ向かっていこうとしているのか、深く真剣に考えてみたいと思います。
今回のSSSでは、これまでの基礎研究の先生の講演とは違い、長年臨床研究をされてこられた井村裕夫 先生のご講演で、我々基礎研究者にとって、臨床研究と基礎研究とをどう橋渡ししていけるのか、大変貴重なお話を聞ける機会となりました。日本と欧米諸国との医学研究の制度等を比べながら、先生がどのようなことを政府と協議して、少しでも日本の臨床研究のあり方を変え、基礎と臨床との橋渡しを進めてこられたかについて、普段聞けない貴重なお話ばかりでした。生命科学の研究が現代盛んに行われているにも関わらず、日本の臨床研究のトップジャーナルへのアクセプト件数が減っているというのは、大変残念なことだと思います。先日、京都大学の山中先生がノーベル医学・生理学賞を受賞されたように、日本における医学系の基礎研究は少しづつ発展してきていますが、その一方で臨床研究への応用というのが追いついていないように感じました。きっとこの先、テーラーメイドの医療が始まる時代が来るでしょうが、それに向けて我々基礎研究者も臨床研究の動向にも気を配りながら、日々、研究に励んでいければと思いました。
九州大学 生体防御医学研究所
分子医科学分野
幡野 敦・沖田 康孝・山内 隆好(博士課程3年)