バイオ研究者が生き抜くための十二の智慧
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目 次
- はじめに(中山 敬一)
- 第1章 ラボノートの書き方(水島 昇)
- 第2章 試薬・実験データの管理(鍔田 武志)
- 第3章 書類整理術(佐谷 秀行)
- 第4章 EndNoteを活用した文書作成術(中山 敬一)
- 第5章 マテリアルリクエストへの対応(水島 昇)
- 第6章 論文レフェリーコメントと闘う心構え(仲野 徹)
- 第7章 論文レフェリーをこなす(中山 敬一)
- 第8章 オーサーシップ(水島 昇)
- 第9章 Skypeでラボミーティング(上野 直人)
- 第10章 Journal Club(中山 啓子)
- 第11章 メディアを介した研究成果の発信(東原 和成)
- 第12章 プレスリリースの書き方(小泉 周)
- 番外編(1)ベンチワークの匠:ヒト型ロボット研究員『まほろ』(夏目 徹)
- 番外編(2)マウス系統の寄託と提供(理研BRC編)(吉木 淳)
- 番外編(3)バイオラボ秘書の仕事術(櫻井 紘子)
「雑用が多すぎる」。研究室の主宰者(PI)の間では、ほとんど挨拶代わりに使われる言葉です。君達のラボのPIも、いつもそうやってブツブツ文句を言っていることでしょう。では「雑用」とは何でしょうか?もちろん厳格な定義はないのですが、私の印象では、直接の研究活動以外のことは全て雑用にあたるみたいです。例えば、毎年度初めに書かなくてはならない大量の報告書とか(誰が読むのだろう?と思います)、他の研究者からの試料リクエストへの対応、他人の論文の査読、など多くの雑用がPIの時間を奪っていきます。自分の研究とは直接関係のないことに多くの時間を取られるのは本当にストレスですが、ラボのマネージメントをする限り、非常に多くの雑用をこなさなくてはならないのは、PIの宿命なのです。
ところが世の中には、このような雑用を簡単に片付けるためのノウハウを持ったスマートなPIがたくさんいます。つまり現場の知恵です。ところが残念なことに、このような素晴らしいノウハウは多くの場合、蓄積されたり伝承されたりすることなく、その人個人の一代限りの知恵として、終わってしまうことがほとんどです。大変もったいないことだと思いませんか?
本書の企画意図は、まさにここにあります。つまり多くのPI達が有する個人的なノウハウを多くの研究者に伝え広め、雑用に取られる時間の総量を大幅に削減することによって、日本の科学の質と量を高めようというのです。本連載が、現在PIである人だけでなく、将来PIになる人にとっても有用でありたいと願っています。今回はとりあえず私の身の回りの方々の中で素晴らしいノウハウを持った人の秘伝を紹介してもらいますが、日本には他にもこのような秘伝が数多く存在することでしょう。本書が試金石となって、いずれは、数多くの情報が統合され広く交換されるよう、心から期待しています。
2013年8月
中山 敬一