第九回(2026年1月):宮脇 敦史 チームディレクター(理化学研究所)

宮脇 敦史 チームディレクター(理研)

トップサイエンティストセミナー【第九回】

  • 講師:宮脇 敦史 チームディレクター(理化学研究所・脳神経科学研究センター)
  • 日時:2026年 1月14日(水)17:00〜18:30(講演60分 + 質疑応答30分)
  • 場所:東京科学大学 湯島キャンパス M&Dタワー 21F 大学院講義室1
  • 演題:『Cruising inside cells』
  • 要旨:
    ミクロ決死隊を結成し、微小管の上をジェットコースターのように滑走したり、核移行シグナルの旗を掲げてクロマチンのジャングルに潜り込んだりする。そんなadventurous な遊び心をもって細胞をクルーズしたいと思う。大切なのは科学の力を総動員することと想像力をたくましくすること。そしてたとえば whale watching を楽しむような心のゆとりが serendipitous な発見を引き寄せるのだと信じている。
  • 参考文献:Nature 388: 882 (1997); Cell 132: 487 (2008); Science 359: 935 (2018).

佐藤 俊朗 教授(慶應義塾大学)

トップサイエンティストセミナー【第八回】

  • 講師:佐藤 俊朗 教授(慶應義塾大学 医学部 医化学講座)
  • 日時:2025年12月15日(月)17:00〜18:30(講演60分 + 質疑応答30分)
  • 場所:M&Dタワー 2F 共用講義室(1)
  • 演題:『ヒト組織の再構成原理を解き明かす:これまでの挑戦と次のフロンティア』
  • 要旨:
    ヒトの臓器は、日々さまざまなダメージを受けながらも自らを守り、修復し、ときにがんへと変化することがあります。私は、臓器の“ミニチュア版”ともいえるオルガノイドをつくる研究を通して、こうした組織の仕組みを解き明かしてきました。本講演では、腸や肝臓などの病気をオルガノイドでどのように再現し、遺伝子や周囲の環境が臓器の形と働きにどのような影響を与えるかを紹介します。また、再生医療への応用や新しいオルガノイドデザインへ挑む未来の研究についてお話ししたいと思います。
  • 参考文献:Nature 459: 262 (2009); Nature 608: 784 (2022); Nature 641: 1248 (2025).

柳沢 正史 教授(筑波大学)

トップサイエンティストセミナー【第七回】

  • 講師:柳沢 正史 教授(筑波大学)
  • 日時:2025年11月17日(月)17:00〜18:30(講演60分 + 質疑応答30分)
  • 場所:M&Dタワー 4F アクティブラーニング教室
  • 演題:『睡眠の謎に挑む:原理の追求から社会実装研究まで』
  • 要旨:
    健やかな睡眠は健康と生産性の維持のために必須である。睡眠覚醒は中枢神経系を持つ動物種に普遍的な現象であるが、その機能と制御メカニズムは、いまだ謎に包まれている。睡眠覚醒調節の根本的な原理、つまり「眠気」(睡眠圧)の脳内での実体とはいったい何なのか、またそもそもなぜ睡眠が必要なのか等、睡眠学の基本課題は全く明らかになっていない。本講演では、「眠気」の脳内での実体は何なのか?といった謎への探索的基礎研究について解説する。さらに、日常の睡眠を可視化して分かって来たことや、最新研究から見えてきた、健やかに眠るための秘訣についても紹介する。
  • 参考文献:Nature 332: 411 (1988); Cell 92: 573 (1998); Nature 539: 378 (2016).

近藤 滋 所長(国立遺伝学研究所)

トップサイエンティストセミナー【第六回】

  • 講師:近藤 滋 所長(国立遺伝学研究所)
  • 日時:2025年10月6日(月)17:00〜18:30(講演60分 + 質疑応答30分)
  • 場所:M&Dタワー 2F 共用講義室2
  • 演題:『生物の形を作る「遺伝子ではない」仕組み』
  • 要旨:
    生物の器官や臓器の機能は、その「形態」に依存します。例えば、脊椎動物の関節を思い浮かべてください。体を動かすためには、骨、軟骨、筋肉などの各パーツが正確に配置されていることが必須です。臓器などの形態を決めているのは、究極的には遺伝子です。しかし、遺伝子はたんぱくのアミノ酸配列を決めているだけなので、それ単体では、マクロな形態を作る情報は持っていません。その足りない原理を探すのが、形態学の目的です。今回の講演では、簡単な物理反応の組み合わせが、動物の体にある等間隔の構造(模様、歯、羽根、指など)や、昆虫の外部器官(例えば、カブトムシの角)を作る仕組みを解説します。
  • 参考文献:Nature 376: 765 (1995); Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104: 4790 (2007); Science 335: 677 (2012).

片桐 秀樹 教授(東北大学 大学院医学系研究科)

トップサイエンティストセミナー【第五回】

  • 講師:片桐 秀樹 教授(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 日時:2025年9月10日(水)17:00〜18:30(講演60分 + 質疑応答30分)
  • 場所:M&Dタワー 4F アクティブラーニング教室
  • 演題:『臓器間ネットワークによる個体レベルでの代謝制御機構 ~発見から応用へ~』
  • 要旨:
    ヒトを初めとする多臓器生物においては、全身の各臓器・組織の代謝は、個体として効率よく一方向に導くべく、臓器間で密接に連関し協調している。我々は、この臓器間の連携機構として神経系を介する仕組みを次々と見いだし、末梢臓器の代謝状態を中枢が感知し個体レベルで調節することで動的恒常性が維持されるという臓器間ネットワークの概念を提唱した。本講演では、臓器間ネットワークに関するこれまでの研究の概略とともに、糖尿病根治に向けた人為的制御の取り組みを紹介する。さらに、最近取り組んでいる糖新生制御に関する新たな概念と、それを担う臓器間ネットワーク機構についても議論したい。
  • 参考文献:Nat. Metabolism in press (2025); Nat. Biomed. Eng. 8: 808 (2024); Nat. Commun. 14: 3253 (2023).

冨樫 庸介 教授(岡山大学 学術研究院医歯薬学域)

トップサイエンティストセミナー【第四回】

  • 講師:冨樫 庸介 教授(岡山大学 学術研究院医歯薬学域)
  • 日時:2025年7月17日(木)17:00〜18:30(講演60分 + 質疑応答30分)
  • 場所:M&Dタワー 4F アクティブラーニング教室
  • 演題:『腫瘍浸潤リンパ球の解析から見えてきたもの』
  • 要旨:
    免疫チェックポイント阻害薬は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を活性化して効果を発揮していることからも、TIL解析が抗腫瘍免疫応答の本態解明には最も重要である。我々はヒト臨床検体由来のTILのシングルセルシーケンス・空間解析などからがん細胞を直接攻撃しているT細胞がPD-1などを発現した疲弊状態にあり、更に局所の3次リンパ様構造を形成するのに極めて重要であることを明らかにした。また、T細胞疲弊の原因としてミトコンドリア障害が報告されていた。我々はその原因として、がん細胞からTILへのミトコンドリア伝播が関与しているという新たな免疫逃避機構を明らかにした。現在その代謝変容による分化への影響などを解析中である。
  • 参考文献:Nature 638: 225 (2025); Cancer Res. 85: 1082 (2025); Proc. Natl. Acad. Sci. USA 121: e2320189121 (2024).

山中 伸弥 教授(京都大学 iPS細胞研究所)

トップサイエンティストセミナー【第三回】

  • 講師:山中 伸弥 教授(京都大学 iPS細胞研究所)
  • 日時:2025年6月23日(月)17:00〜18:30(講演60分 + 質疑応答30分)
  • 場所:M&Dタワー 2F 鈴木章夫記念講堂
  • 演題:予想外の実験結果に導かれて
  • 要旨:
    1989年、2年間の研修医を終えた私は、一度は基礎研究に携わりたいと考え、大学院へ進学しました。当時の私は、遺伝子に関する知識も乏しく、幹細胞や再生医療という言葉すら知りませんでした。大学院、そしてその後に留学したアメリカでも、私の研究は常に予想外の結果の連続でした。気がつけばES細胞に出会い、iPS細胞を開発し、再生医療という応用研究に携わるようになっていました。3年前にiPS細胞研究所の所長を退いた後は、再び基礎研究に注力しています。本講演では、これまでの研究人生を振り返りながら、偶然や予想外の発見がいかに研究を導いてきたかをお話ししたいと思います。
  • 参考文献:Cell 126: 663 (2006); Cell 131: 861 (2007); Science 321: 699 (2008)

原 英二 教授(大阪大学 微生物病研究所)

トップサイエンティストセミナー【第二回】

  • 講師:原 英二 教授(大阪大学 微生物病研究所)
  • 日時:2025年5月30日(金)17:00〜18:30(講演60分 + 質疑応答30分)
  • 場所:M&Dタワー 11F 大学院講義室3(M&Dタワー西側=順天堂側、EVホールの反対側)
  • 演題:細胞老化の役割とそのメカニズム:老化の理解と制御に向けて
  • 要旨:
    細胞老化は、発がんの危険性がある様々なストレスにより誘導される不可逆的な細胞分裂停止機構で、重要ながん抑制機構として機能しています。しかし、同時に炎症性因子を分泌するSASPと呼ばれる現象も起こすため生体機能の低下も引き起こします。このため、体内から老化細胞を除去する方法の開発が注目されています。しかし、老化細胞には多様性があり、生体の恒常性維持に必要な細胞も存在するため、無差別な除去は生体機能の低下を招く危険性があります。そこで我々は、老化細胞を除去するのではなく、細胞老化を引き起こす原因を特定しその防止を目指した研究を行っています。本講演では、細胞老化の誘導因子の一つとして微生物に着目した研究についてお話します。
  • 参考文献:Nat. Cell Biol. 25: 86 (2023); Nat. Aging 2: 115 (2022); Nature 499: 97-101 (2013)*
    (*Science 誌が選ぶ2013年の Breakthrough of the Year の一つに選ばれました)。

近藤 豊 教授(名古屋大学大学院医学系研究科)

トップサイエンティストセミナー【第一回】

  • 講師:近藤 豊 教授(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 日時:2025年4月18日(金)17:00〜18:30(講演60分 + 質疑応答30分)
  • 場所:M&Dタワー 2F 共用講義室2
  • 演題:がん細胞増殖を制御する長鎖非翻訳RNAの機構解明と治療への応用
  • 要旨:
    近年、長鎖非翻訳RNA(lncRNA)は新たなゲノム制御分子として注目されている。腫瘍細胞においてもその機能が次第に解明され、一部はがん治療の標的分子として期待されている。我々は、lncRNA TUG1 が多様ながん種で高発現し、がん細胞のR-loop解消に不可欠であることを明らかにした。この知見をもとに、がん遺伝子として機能するTUG1を標的とした antiTUG1製剤を開発し、2024年より膠芽腫を対象とした医師主導治験を開始した。本発表では、TUG1の機能解明に関する最新の知見を紹介するとともに、核酸医薬のがん治療における可能性について議論を深めたい。