第11回(2026年3月):濡木 理 教授(東京大学・大学院理学系研究科)

濡木 理 教授(東京大学)

トップサイエンティストセミナー【第11回】

  • 講師:濡木 理 教授(東京大学・大学院理学系研究科)
  • 日時:2026年 3月12日(木)17:00〜18:30(講演60分 + 質疑応答30分)
  • 場所:東京科学大学 湯島キャンパス M&Dタワー 13F 大学院講義室2
  • 演題:『核酸研究と膜研究の邂逅、そして構造生物学の先に』
  • 要旨:
    私は、膜輸送体・受容体の分子機構、非翻訳RNAのもたらす生命現象(遺伝暗号翻訳、RNA干渉、ゲノム編集)、自然免疫の分子機構に焦点を当てて構造生物学研究を進めています。特に、チャネルロドプシン、CRISPR-Cas9の立体構造を世界で初めて解明しました。私は、膜と核酸が生命の2大重要因子であり、これらが出会うことで全ての生命現象が始まると考え、膜と核酸のクロストーク(核酸の膜透、膜上での核酸の化学反応、核酸による膜同士の融合)の研究を開始し、これまでの発散した研究が収束しつつあります。一方、私は10年前からベンチャーを2つ立ち上げ、1つは成功し、1つは失敗しました。その経験から、研究者(人間)としての人生を深く考えるようになりました。本セミナーでは、私の研究者人生をかけた基礎研究の経緯と、これを社会還元する夢についてお話ししたいと思います。
  • 参考文献:Cell 156: 935-49 (2014); Nature 618: 1085-1093 (2023); Nature 631: 224-231 (2024).
  • 事前登録:不要(学内外を問わず、どなたでもご参加いただけます)
  • オンライン配信:なし(録画もありません)

玉田 耕治 教授(山口大学)

トップサイエンティストセミナー【第10回】

  • 講師:玉田 耕治 教授(山口大学・大学院医学系研究科)
  • 日時:2026年 2月20日(金)17:00〜18:30(講演60分 + 質疑応答30分)
  • 場所:東京科学大学 湯島キャンパス M&Dタワー 13F 大学院講義室2
  • 演題:『遺伝子改変免疫細胞療法の最前線とアカデミア発研究の社会実装』
  • 要旨:
    遺伝子改変免疫細胞療法は、難治性がんに対する革新的治療として急速に発展しており、CAR-T細胞療法は血液がんにおいて既に高い治療効果を示している。一方で、有害事象や再発、固形がんにおける有効性の限界など、依然として多くの課題が残されている。本講演では、最新のがん免疫療法の現状と課題を概説するとともに、次世代型CAR-T細胞療法を含む新たな免疫細胞療法の将来像について議論する。あわせて、演者自身の研究成果を基盤にアカデミア発スタートアップを設立し、研究開発と事業化の両面に取り組んでいる経験を踏まえ、基礎研究の社会実装に向けた展望を紹介する。
  • 参考文献:Nat. Med. 6: 283 (2000); J. Clin. Invest. 121 (2011); Nat. Biotechnol. 36: 346 (2018).

上村 匡 名誉教授(京都大学)

トップサイエンティストセミナー【番外編】

  • 講師:上村 匡 名誉教授(京都大学・医生物学研究所)
  • 日時:2026年 1月29日(木)17:00〜18:30(講演60分 + 質疑応答30分)
  • 場所:東京科学大学 湯島キャンパス M&Dタワー 21F 大学院講義室1
  • 演題:『栄養発生生物学:成長期の栄養環境と寿命をつなぐ分子基盤』
  • 要旨:
    受精から死に至るまでのライフサイクルは、出生時の体重や寿命を含む様々な形質により特徴づけられる。各形質は個体の遺伝的要因に加えて、栄養などの環境要因に大きく影響される。我々は、成長期での栄養環境(栄養履歴 nutrition history)が、後半生の形質にまで影響し得る長期的な効果に注目した。そして、この長期的な効果の背景にあるメカニズムに迫るため、新たな実験系を構築した。解析の結果、特定の栄養履歴がヒストンアセチル化を介するエピジェネティックな応答を引き起こし、寿命を短縮させる可能性を見出した。原因となる栄養素、見出した応答と寿命短縮との因果関係、カギとなる組織を議論する。
  • 参考文献:Cell 98: 585 (1999); Dev. Cell 10: 209 (2006); Dev. Cell 19: 389 (2010).

宮脇 敦史 チームディレクター(理研)

トップサイエンティストセミナー【第9回】

  • 講師:宮脇 敦史 チームディレクター(理化学研究所・脳神経科学研究センター)
  • 日時:2026年 1月14日(水)17:00〜18:30(講演60分 + 質疑応答30分)
  • 場所:東京科学大学 湯島キャンパス M&Dタワー 21F 大学院講義室1
  • 演題:『Cruising inside cells』
  • 要旨:
    ミクロ決死隊を結成し、微小管の上をジェットコースターのように滑走したり、核移行シグナルの旗を掲げてクロマチンのジャングルに潜り込んだりする。そんなadventurous な遊び心をもって細胞をクルーズしたいと思う。大切なのは科学の力を総動員することと想像力をたくましくすること。そしてたとえば whale watching を楽しむような心のゆとりが serendipitous な発見を引き寄せるのだと信じている。
  • 参考文献:Nature 388: 882 (1997); Cell 132: 487 (2008); Science 359: 935 (2018).

佐藤 俊朗 教授(慶應義塾大学)

トップサイエンティストセミナー【第8回】

  • 講師:佐藤 俊朗 教授(慶應義塾大学 医学部 医化学講座)
  • 日時:2025年12月15日(月)17:00〜18:30(講演60分 + 質疑応答30分)
  • 場所:M&Dタワー 2F 共用講義室(1)
  • 演題:『ヒト組織の再構成原理を解き明かす:これまでの挑戦と次のフロンティア』
  • 要旨:
    ヒトの臓器は、日々さまざまなダメージを受けながらも自らを守り、修復し、ときにがんへと変化することがあります。私は、臓器の“ミニチュア版”ともいえるオルガノイドをつくる研究を通して、こうした組織の仕組みを解き明かしてきました。本講演では、腸や肝臓などの病気をオルガノイドでどのように再現し、遺伝子や周囲の環境が臓器の形と働きにどのような影響を与えるかを紹介します。また、再生医療への応用や新しいオルガノイドデザインへ挑む未来の研究についてお話ししたいと思います。
  • 参考文献:Nature 459: 262 (2009); Nature 608: 784 (2022); Nature 641: 1248 (2025).

柳沢 正史 教授(筑波大学)

トップサイエンティストセミナー【第7回】

  • 講師:柳沢 正史 教授(筑波大学)
  • 日時:2025年11月17日(月)17:00〜18:30(講演60分 + 質疑応答30分)
  • 場所:M&Dタワー 4F アクティブラーニング教室
  • 演題:『睡眠の謎に挑む:原理の追求から社会実装研究まで』
  • 要旨:
    健やかな睡眠は健康と生産性の維持のために必須である。睡眠覚醒は中枢神経系を持つ動物種に普遍的な現象であるが、その機能と制御メカニズムは、いまだ謎に包まれている。睡眠覚醒調節の根本的な原理、つまり「眠気」(睡眠圧)の脳内での実体とはいったい何なのか、またそもそもなぜ睡眠が必要なのか等、睡眠学の基本課題は全く明らかになっていない。本講演では、「眠気」の脳内での実体は何なのか?といった謎への探索的基礎研究について解説する。さらに、日常の睡眠を可視化して分かって来たことや、最新研究から見えてきた、健やかに眠るための秘訣についても紹介する。
  • 参考文献:Nature 332: 411 (1988); Cell 92: 573 (1998); Nature 539: 378 (2016).

近藤 滋 所長(国立遺伝学研究所)

トップサイエンティストセミナー【第6回】

  • 講師:近藤 滋 所長(国立遺伝学研究所)
  • 日時:2025年10月6日(月)17:00〜18:30(講演60分 + 質疑応答30分)
  • 場所:M&Dタワー 2F 共用講義室2
  • 演題:『生物の形を作る「遺伝子ではない」仕組み』
  • 要旨:
    生物の器官や臓器の機能は、その「形態」に依存します。例えば、脊椎動物の関節を思い浮かべてください。体を動かすためには、骨、軟骨、筋肉などの各パーツが正確に配置されていることが必須です。臓器などの形態を決めているのは、究極的には遺伝子です。しかし、遺伝子はたんぱくのアミノ酸配列を決めているだけなので、それ単体では、マクロな形態を作る情報は持っていません。その足りない原理を探すのが、形態学の目的です。今回の講演では、簡単な物理反応の組み合わせが、動物の体にある等間隔の構造(模様、歯、羽根、指など)や、昆虫の外部器官(例えば、カブトムシの角)を作る仕組みを解説します。
  • 参考文献:Nature 376: 765 (1995); Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104: 4790 (2007); Science 335: 677 (2012).

片桐 秀樹 教授(東北大学・大学院医学系研究科)

トップサイエンティストセミナー【第5回】

  • 講師:片桐 秀樹 教授(東北大学・大学院医学系研究科)
  • 日時:2025年9月10日(水)17:00〜18:30(講演60分 + 質疑応答30分)
  • 場所:M&Dタワー 4F アクティブラーニング教室
  • 演題:『臓器間ネットワークによる個体レベルでの代謝制御機構 ~発見から応用へ~』
  • 要旨:
    ヒトを初めとする多臓器生物においては、全身の各臓器・組織の代謝は、個体として効率よく一方向に導くべく、臓器間で密接に連関し協調している。我々は、この臓器間の連携機構として神経系を介する仕組みを次々と見いだし、末梢臓器の代謝状態を中枢が感知し個体レベルで調節することで動的恒常性が維持されるという臓器間ネットワークの概念を提唱した。本講演では、臓器間ネットワークに関するこれまでの研究の概略とともに、糖尿病根治に向けた人為的制御の取り組みを紹介する。さらに、最近取り組んでいる糖新生制御に関する新たな概念と、それを担う臓器間ネットワーク機構についても議論したい。
  • 参考文献:Nat. Metabolism in press (2025); Nat. Biomed. Eng. 8: 808 (2024); Nat. Commun. 14: 3253 (2023).

冨樫 庸介 教授(岡山大学・学術研究院医歯薬学域)

トップサイエンティストセミナー【第4回】

  • 講師:冨樫 庸介 教授(岡山大学・学術研究院医歯薬学域)
  • 日時:2025年7月17日(木)17:00〜18:30(講演60分 + 質疑応答30分)
  • 場所:M&Dタワー 4F アクティブラーニング教室
  • 演題:『腫瘍浸潤リンパ球の解析から見えてきたもの』
  • 要旨:
    免疫チェックポイント阻害薬は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を活性化して効果を発揮していることからも、TIL解析が抗腫瘍免疫応答の本態解明には最も重要である。我々はヒト臨床検体由来のTILのシングルセルシーケンス・空間解析などからがん細胞を直接攻撃しているT細胞がPD-1などを発現した疲弊状態にあり、更に局所の3次リンパ様構造を形成するのに極めて重要であることを明らかにした。また、T細胞疲弊の原因としてミトコンドリア障害が報告されていた。我々はその原因として、がん細胞からTILへのミトコンドリア伝播が関与しているという新たな免疫逃避機構を明らかにした。現在その代謝変容による分化への影響などを解析中である。
  • 参考文献:Nature 638: 225 (2025); Cancer Res. 85: 1082 (2025); Proc. Natl. Acad. Sci. USA 121: e2320189121 (2024).

山中 伸弥 教授(京都大学・iPS細胞研究所)

トップサイエンティストセミナー【第3回】

  • 講師:山中 伸弥 教授(京都大学・iPS細胞研究所)
  • 日時:2025年6月23日(月)17:00〜18:30(講演60分 + 質疑応答30分)
  • 場所:M&Dタワー 2F 鈴木章夫記念講堂
  • 演題:予想外の実験結果に導かれて
  • 要旨:
    1989年、2年間の研修医を終えた私は、一度は基礎研究に携わりたいと考え、大学院へ進学しました。当時の私は、遺伝子に関する知識も乏しく、幹細胞や再生医療という言葉すら知りませんでした。大学院、そしてその後に留学したアメリカでも、私の研究は常に予想外の結果の連続でした。気がつけばES細胞に出会い、iPS細胞を開発し、再生医療という応用研究に携わるようになっていました。3年前にiPS細胞研究所の所長を退いた後は、再び基礎研究に注力しています。本講演では、これまでの研究人生を振り返りながら、偶然や予想外の発見がいかに研究を導いてきたかをお話ししたいと思います。
  • 参考文献:Cell 126: 663 (2006); Cell 131: 861 (2007); Science 321: 699 (2008)