研究の軌跡

※ 中山が最終著者またはコレスポ

※ 主要な共同研究

1996

p27ノックアウトマウスを作製し、世界で初めてCDKインヒビターの欠損によってがんが生じることを発見した ( Nakayama et al., Cell表紙 )

1997

Bcl-2ノックアウトマウスの骨髄移植実験によって、Bcl-2が骨髄幹細胞の生存に重要であることを証明した ( Matsuzaki et al., Blood )

1998

Bcl-2のファミリー分子であるA1のノックアウトマウスを作製し、好中球でのアポトーシスが亢進していることを発見した ( Hamasaki et al., J. Exp. Med. )

1999

F-boxタンパク質FWD1(β-TrCP1/Fbxw1)がβカテニンやIκBを認識することを発見した ( Hatakeyama et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA; Kitagawa et al., EMBO J. )

FWD1と基質の結合様式や他のIκBファミリーに対する反応性などを明らかにした ( Shirane et al., J. Biol. Chem.; Hattori et al., J. Biol. Chem. )

p27のユビキチン化に関する詳細な生化学的解析を行った ( Shirane et al., J. Biol. Chem. )

2000

世界で初めてのF-boxタンパク質ノックアウトマウスであるSkp2ノックアウトマウスを作製し、p27やサイクリンEが高度に蓄積していることを発見した ( Nakayama et al., EMBO J. )

チェックポイントに関わる分子であるChk1のノックアウトマウスを作製し、Chk1が発生段階のDNA傷害チェックポイントに重要であることを示した ( Takai et al., Genes Dev. )

サイトカインレセプターに会合するチロシンキナーゼTyk2のノックアウトマウスを作製し、インターフェロンαに対する応答性やIL-12を介するレスポンスが障害されていることを発見した ( Shimoda et al., Immunity )

IκBキナーゼキナーゼとしてNAKを発見 ( Tojima et al., Nature )

p27の主要リン酸化部位がSer-10であることを発見 ( Ishida et al., J. Biol. Chem. )

サイクリンのユビキチン化に関わるE2の一つであるmE2-CがAPC/Cによってユビキチン化されることを証明した ( Yamanaka et al., Mol. Biol. Cell )

p57ノックアウトマウスを作製し、ほとんどが出生付近で死亡することを発見。口蓋裂や骨格異常、さらに腸管の欠損等、p27ノックアウトマウスとは大きく異なることを示した ( Takahashi et al., J. Biochem. )

2001

Skp2ノックアウトマウスにおいてもp27のユビキチン化は起こりうることを実証した。未知の細胞質内酵素活性を検出 ( Hara et al., J. Biol. Chem. )

世界で初めてU-box型ユビキチンリガーゼを発見した ( Hatakeyama et al., J. Biol. Chem. )

p27のT187A変異ノックインマウスを作製し、p27がS期からG2期にかけて分解不全を起こすものの、細胞周期は全体として異常なく進行することを報告した ( Malek et al., Nature )

A1ノックアウトマウスを用いて、A1がマスト細胞の生存に必須であることを証明した ( Xiang et al., J. Exp. Med. )

2002

PKCδのノックアウトマウスを作製し、B細胞の増殖が亢進して自己免疫疾患を発症することを発見した ( Miyamoto et al., Nature )

線虫におけるSkp1ホモログについて、多くのファミリーを同定し、その機能をRNAiで調べた ( Yamanaka et al., Curr. Biol. )

Skp2ノックアウトマウスの肝臓を部分切除すると、肝臓の組織容量は回復するが細胞数は増えていないことを発見した ( Minamishima et al., Cancer Res. )

p130ノックアウトマウスを作製し、p130がGABAAレセプターの機能に重要な役割を果たしていることを発見した ( Kanematsu et al., EMBO J. )

p27の主要リン酸化部位Ser-10のリン酸化はp27の核外移行を促進することを発見した ( Ishida et al., J. Biol. Chem. )

CHIPがParkinと会合してE4様の働きをしていることを実証した ( Imai et al., Mol. Cell )

2003

膜結合型イムノフィリンFKBP38がBcl-2やカルシニューリンに結合して、その活性を制御することにより、抗アポトーシス作用を有することを発見した ( Shirane & Nakayama, Nature Cell Biol. )

FWD1(β-TrCP1/Fbxw1)のノックアウトマウスを作製し、βカテニンやIβBの分解が部分的に阻害されていることを証明した ( Nakayama et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA )

p57のユビキチン化がSkp2によって行われていることを発見した ( Kamura et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA )

Skp2のプロモーターを解析し、RasからのシグナルによってGABPが結合して転写を活性化していることを証明した ( Imaki et al., Cancer Res. )

2004

原らが以前発見していたp27に対する未知の細胞質内酵素を精製し、クローニングした。これはKPC(Kip1 ubiquitylation Promoting Complex)と名付けられ、p27のG1期でのユビキチン化に関与していることを発見した ( Kamura et al., Nature Cell Biol. )

p27/Skp2ダブルノックアウトマウスを作製し、Skp2ノックアウトマウスでの異常がほとんど消失することにより、Skp2の主要な標的がp27であることを証明した ( Nakayama et al., Dev. Cell )

c-MycのユビキチンリガーゼがFbw7であることを発見した ( Yada et al., EMBO J. )

われわれが発見した高等生物で初めてのE4分子であるE4B/UFD2aが、ポリグルタミン病原因分子Ataxin-3/MJD1のユビキチン化に関わることを発見し、ショウジョウバエを用いた研究によって、その治療効果を実証した ( Matsumoto et al., EMBO J. )

Cul2とCul5に結合するBCボックスタンパク質を特定し、Cul2-Rbx1とCul5-Rbx2は異なるBCボックスタンパク質(VHLドメインとSOCSドメイン)を認識することを発見した ( Kamura et al., Genes Dev. )

Fbw7のノックアウトマウスを作製し、胎生期に血管分化異常を呈して死亡することを発見した ( Tsunematsu et al., J. Biol. Chem. )

Fbw7がp53依存性のハプロインサフィシエントな癌抑制遺伝子であることを発見した ( Mao et al., Nature )

Duplin/CHD8のノックアウトマウスを作製し、胎生期に強いアポトーシスを呈して死亡することを発見した ( Nishiyama et al., Mol. Cell. Biol. )

2005

p27ノックアウトマウスでは、膵島の肥大によって高血糖になりにくいことを証明した ( Uchida et al., Nature Med. )

p27のS10Aノックインマウスを作製し、G0期の安定性が極度に低くなっていることを発見した ( Kotake et al., J. Biol. Chem. )


c-Mycを分解する人工ユビキチンリガーゼMax-Uを作製し、それががん形質を抑制し、実際に治療効果があることを証明した ( Hatakeyama et al., Cancer Res. )

Skp2がRAG-2をユビキチン化し、VDJ再構成に関与していることを証明した ( Jiang et al., Mol. Cell )

ALDH2ノックアウトマウスを作製し、ALDH2がニトログリセリンによる血管拡張に重要な役割を果たしていることを証明した ( Chen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA )

E4B/UFD2aのノックアウトマウスを作製し、E4Bが心臓発生に重要な役割を果たしていることを明らかにした。またヘテロマウスでは生後1年程度より脊髄小脳失調を示すことが明らかとなった ( Kaneko-Oshikawa et al., Mol. Cell. Biol. )

KPC2の分子解剖的な検討を行い、UBL-UBAタンパク質として特異な性質を有することを報告した ( Hara et al., Mol. Cell. Biol. )

2006

未知の膜タンパク質プロトルーディンがRab11-GDPに結合して、神経突起形成に重要な役割を果たしていることを明らかにした ( Shirane & Nakayama, Science )

細胞周期と発がんに関与するユビキチンリガーゼ群について、詳細なレビュー ( Nakayama & Nakayama, Nature Rev. Cancer )

PKCδを介したシグナル伝達系が活性酸素による細胞老化に深く関わっていることを証明した ( Takahashi et al., Nature Cell Biol. )

Fbxw8ノックアウトマウスを作製し、この機能未知なF-boxタンパク質がCul1とCul7を橋渡しするような新規複合体を形成すること、胎盤の正常な発生にとって重要であることを報告した ( Tsunematsu et al., Mol. Cell. Biol. )

2007

Fbw7のT細胞特異的なコンディショナルノックアウトマウスを作製し、T細胞の細胞周期停止にFbw7が必須であることを発見した。またこのマウスではリンパ腫の発生を高頻度に認め、Fbw7が癌抑制遺伝子であることを世界で初めてマウスモデルで実証した ( Onoyama et al., J. Exp. Med. )

p27の核外移行がサイクリンD2に依存していることを発見した ( Susaki et al., Mol. Cell. Biol. )

Foxo3aのノックアウトマウスでは骨髄幹細胞の機能が一部喪失することを発見した ( Miyamoto et al., Cell Stem Cell )

2008

Fbw7の骨髄特異的コンディショナルノックアウトマウスを作製し、骨髄幹細胞におけるG0期の減少と骨髄再建能の喪失、およびT細胞急性リンパ性白血病を発症することを発見した ( Matsuoka et al., Genes Dev. )

FKBP38ノックアウトマウスを作製し、神経細胞におけるアポトーシスが亢進していること、プロトルーディンのリン酸化が亢進していることを発見した ( Shirane et al., Genes Cells )

Wnt経路依存的なp27の分解は、Skp2に依存せず、Cul4経路によって起こることを発見した ( Miranda-Carboni et al., Genes Dev. )

統合失調症関連遺伝子FEZ1のノックアウトマウスを作製し、過行動やドーパミン作動性神経の過活動、精神興奮剤への過剰な反応等、統合失調症の症状の一部を再現することに成功した ( Sakae et al., Hum. Mol. Genet. )

2009

クロマチンリモデリング因子CHD8がp53に結合し、さらにヒストンH1をリクルートすることによって、初期胚においてp53によるアポトーシス誘導を抑制することを発見した ( Nishiyama et al., Nature Cell Biol. )

p57遺伝子にp27をノックインしたマウスを作製し、生体内における大部分のp57の機能はp27によって置き換えられることが可能であることを証明した ( Susaki et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA )

Skp2がAktによってリン酸化され、それがSCFユビキチンリガーゼ活性に重要であること、またリン酸化されたSkp2は細胞質へ局在するようになることを証明した ( Lin et al., Nature Cell Biol. )

Protrudinの結合タンパク質としてVAPを同定し、その結合がProtrudinの突起伸長作用に必要であることを示した ( Saita et al., J. Biol. Chem. )

Fbxo45はF-boxタンパク質の一つであるが、F-boxドメインの一塩基置換によりSCF複合体を形成することができず、その代わりにPAMに結合することによって、Fbxo45-PAMという新規のユビキチンリガーゼ複合体を形成することが明らかとなった。またFbxo45のノックアウトマウスを作製したところ、PAMノックアウトマウスとよく似た神経分化の異常が認められた ( Saiga et al., Mol. Cell. Biol. )

2010

Rb欠損マウスでは下垂体に腫瘍を発生するが、これはSkp2を欠損させると完全に抑制されることが明らかとなった ( Wang et al., Nature Genet. )

新規ヒストン脱メチル化酵素KDM7がヒストンH3のK9とK27の脱メチル化を媒介するデュアルデメチレースであることを示し、脳の発生に必須の役割を果たしていることを発見した ( Tsukada et al., Genes Dev. )

Skp2の欠損は、癌遺伝子によって誘導される細胞老化プログラムを促進するが、これは従来提唱されているようなp19ARF/p53経路に依存しないことを明らかにした。またSkp2の阻害薬はp19ARF/p53経路が機能しない癌において細胞老化を誘導し、癌の予後を改善されることを証明した ( Lin et al., Nature )

E4Bトランスジェニックマウスを作製したところ、視床下部の神経内に凝集体が生じ、神経変性が起こると共に、マウスが高度に肥満することが明らかとなった ( Susaki et al., J. Biol. Chem. )

RhoA遺伝子の転写調節にはMyc/Skp2/Miz1/p300複合体が関係しており、Skp2はユビキチンリガーゼ活性とは関係なく、これらの複合体形成に関与する。Skp2の過剰発現はRhoAの増加につながり、癌転移に促進的に働くことが明らかとなった ( Chan et al., Nature Cell Biol. )

2011

Fbw7の肝臓特異的なコンディショナルノックアウトマウスでは、短期間ではSREBPの蓄積と共に脂肪肝になり、長期間ではNotchの蓄積と共に胆道増生による過誤腫が発生することを発見した ( Onoyama et al., J. Clin. Invest. )

Fbw7がBcl-2ファミリー分子の一つMcl-1をユビキチン化することによってアポトーシスを制御していることを明らかにした ( Inuzuka et al., Nature )

RAPLの欠損がp27のSer10リン酸化を介する局在異常のためにリンパ球が異常増殖することを明らかにした ( Katagiri et al., Immunity )

E3/E4活性を有するUBE4BがMdm2によるp53の分解を促進することによってp53の機能を抑制していることを発見した ( Wu et al., Nature Med. )

Fbw7の脳特異的なコンディショナルノックアウトマウスは、生直後に吸乳障害によって死亡する。このとき脳の発生過程でNotchの分解異常による蓄積と脳形態の異常を認め、神経幹細胞増加やアストロサイトへの分化亢進が発見された ( Matsumoto et al., J. Biol. Chem. )

骨髄特異的p57コンディショナルノックアウトマウスを作製し、p57が骨髄幹細胞のG0期維持に必須の分子であることを示した。さらにp57が欠損すると骨髄幹細胞の幹細胞性が喪失することにより、幹細胞においてG0期維持が大変重要であることが遺伝学的に実証された( Matsumoto et al., Cell Stem Cell )

FBXL5ノックアウトマウスは胎生早期致死であるが、その主要基質であるIRP2をダブルノックアウトすると正常に生まれるようになる。さらに肝臓特異的FBXL5コンディショナルノックアウトマウスを作製すると脂肪肝が起こり、そこに高鉄含有食を与えるとマウスが死亡することが明らかとなった。このことはFBXL5-IRP2系が鉄代謝における重要な制御機構であることを遺伝学的に示している ( Moroishi et al., Cell Metab. )

神経特異的p57コンディショナルノックアウトマウスを作製したところ、全身ノックアウトマウスが生直後に死亡するのに対して、生後2~3週まで生存可能であった。しかしこのマウスは非閉塞性水頭症と小脳の形成異常を伴い、特にゴルジ細胞等のPax2陽性前駆細胞が消失していた。この異常はp53依存性のアポトーシスによって起こることが遺伝学的に証明された ( Matsumoto et al., Mol. Cell. Biol. )

胎児肝における造血幹細胞の幹細胞性はp27とp57に依存しており、それは細胞質に局在するp27/p57がHsc70を介してサイクリンD1を結合することによって、サイクリンD1の細胞質から核への移行を阻害していることに基づくことを明らかにした ( Zou et al., Cell Stem Cell )

Protrudinの結合分子をプロテオミクスを用いて探索し、モーター分子KIF5との会合を証明した。さらにProtrudinはRab11をはじめとする多くのCargo分子をKIF5に載せるアダプター分子としての役割を果たすことが実証された ( Matsuzaki et al., Mol. Biol. Cell )

2012

CHD8がβカテニンと結合し、さらにヒストンH1をリクルートすることによってクロマチン構造を変化させ、Wnt標的因子の転写を抑制することが明らかとなった ( Nishiyama et al., Mol. Cell. Biol. )

サイクリンD1のユビキチン化に関与すると報告されている4つのF-boxタンパク質(Fbxo4、Fbxw8、Skp2、Fbxo31)は全て遺伝学的に関与が確認できないことを明らかにした ( Kanie et al., Mol. Cell. Biol. )

ErbB依存的なAktのユビキチン化はSCF/Skp2ユビキチンリガーゼによって起こり、それはAktの膜局在および活性化に必要である。またSkp2のサイレンシングはHer2過剰発現腫瘍をハーセプチンに対する感受性を高めることを発見した ( Chan et al., Cell )

ディファレンシャルプロテオミクスを利用してF-boxタンパク質の基質を網羅的に探索する技術(DiPIUS)を開発した ( Yumimoto et al., J. Proteome Res. )

リジンのないユビキチンを使って、網羅的なユビキチン化タンパク質の同定法を開発し、約800のタンパク質の約1400のユビキチン化部位を決定した ( Oshikawa et al., J. Proteome Res. )

2013

マイトファジー時にFKBP38やBcl-2がミトコンドリアからERへと脱出することを発見した ( Saita et al., Nature Commun. )

慢性骨髄性白血病においてFbxw7が欠損すると白血病幹細胞が静止期から追い出されて細胞増殖サイクルに進行し、抗がん剤によって死滅することを発見した。これはがん患者においても「G0期追い出し療法」によって、がんが根治できる可能性を示唆する ( Takeishi et al., Cancer Cell )

慢性骨髄性白血病においてFbxw7が欠損すると白血病幹細胞中にc-Mycが蓄積し、p53依存的なアポトーシスを起こして白血病幹細胞が死滅することを発見した ( Reavie et al., Cancer Cell )

FBXL3はCryをユビキチン化して分解を誘導するが、その類似分子であるFBXL21は逆にCryのユビキチン化によってそれを安定化することがわかった。FBXL3ノックアウトマウスの体内時計の異常はFBXL3/FBXL21ダブルノックアウトマウスでは正常化される ( Hirano et al., Cell )

DiPIUS法を用いてFbxw7の基質であるOASISとBBF2H7を同定し、Fbxw7による制御が骨・軟骨分化にとって重要であることを証明した ( Yumimoto et al., J. Biol. Chem. )

Fbxl3は、通常のF-boxタンパク質と異なり、基質であるCry1が結合したときのみSCF複合体を構築できることを発見した ( Yumimoto et al., J. Biol. Chem. )

Skp2の欠失は、pRb/p53の二重変異マウスにおける下垂体や前立腺における腫瘍形成を抑制した ( Zhao et al., Cancer Cell )

2014

pRb変異マウスにおける下垂体腫瘍形成時に、Skp2の欠失はE2F1の作用を増殖からアポトーシスへと変化させる ( Lu et al., Nature Commun. )

T細胞特異的p57コンディショナルノックアウトマウスを作製し、p57がT細胞分化に必須であり、p53の活性とTCRからのシグナルのバランスにp57が重要な役割を果たしていることを示した。またp57とp53のダブル欠損では悪性リンパ腫が発症することを明らかにした ( Matsumoto et al., Blood )

Protrudinが他のHereditary Spastic Paraplagia (HSP) の原因遺伝子産物と結合し、チューブ状ERを形成するのに役立っていることを発見した。またヒトHSP患者で発見された変異は、ERADの障害によってERストレスを起こすことを証明した ( Hashimoto et al., J. Biol. Chem. )

FBXL5の安定性を制御するユビキチンリガーゼとしてHERC2を同定した。HERC2はFBXL5のbasal turnoverを制御しているが、鉄依存的分解には関係ないことがわかった ( Moroishi et al., J. Biol. Chem. )

Fbxw7が精子幹細胞の自己複製能に対して抑制的に働いていることを明らかにした ( Kanatsu-Shinohara et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA )

ユビキチンリガーゼMDM2がRNAヘリケースDDX24をユビキチン化することがわかったが、これは分解に寄与せず、pre-rRNA processingに関与していることを発見した ( Yamauchi et al., Mol. Cell. Biol. )

プロテオミクス解析によってFKBP38の生理的な結合分子としてANKMY2を同定し、ANKMY2がShhシグナル伝達に対して正の作用を持ち、FKBP38はANKMY2を上流から抑制することで負の作用を発揮することを発見した ( Saita et al., J. Biol. Chem. )

インスリンシグナルで起こる変化を多階層オミクスで解析し、鍵となる酵素のリン酸化について発見した ( Yugi et al., Cell Rep. )

2015

骨髄特異的Fbxw7ノックアウトマウスではがん転移が増大し、それはMSCでNotch経路が活性化してCCL2の転写量が増え、その結果として腫瘍随伴マクロファージが増えたためであることを発見した。またCCL2レセプター阻害薬プロパゲルマニウムががん転移を強力に抑制することを見出した ( Yumimoto et al., J. Clin. Invest. )

p57が胎児神経幹細胞において特異的に発現しており、その欠損は成人幹細胞の発生を妨げることを明らかにした ( Furutachi et al., Nature Neurosci. )

FBXL12はALDH3を標的としてユビキチン依存性分解を誘導し、それは胎盤の分化に必須の役割を果たすことを証明した ( Nishiyama et al., Stem Cells )

2016

CHD8はヒトの自閉症で最も変異の多い遺伝子である。マウスにおいて1ペアあるCHD8遺伝子のうち片方を欠損させたヘテロ欠損マウスを作製したところ、その変異マウスは自閉症様症状を呈することが明らかとなった。さらにトランスオミクス解析によって、変異マウスの脳内で神経分化のマスターレギュレーターRESTが異常に活性化している事実を突き止めた。このRESTの異常活性化が神経の発達遅延を引き起こし、自閉症が発症するというメカニズムが高いと考えられた ( Katayama et al., Nature )

2017

lncRNAからはタンパク質は翻訳されないと信じられてきたが、LINC00961から翻訳されるペプチドSPARはリソソームに局在してv-ATPase複合体と結合することによりアミノ酸に依存的なmTOR複合体1の活性化を抑制することを発見した ( Matsumoto et al., Nature )

全てのタンパク質を絶対定量する新技術iMPAQTを開発し、がんにおける全ての代謝酵素の測定からその特徴を発見した ( Matsumoto et al., Nature Methods )

細胞内鉄濃度を制御するユビキチンリガーゼFBXL5の神経特異的コンディショナルノックアウトマウスを作製したところ、神経細胞の過剰増殖が見られることが判明した ( Yamauchi et al., Mol. Cell. Biol. )

プロトルーディン遺伝子のマイクロエクソンのスプライス制御にSRRM4が関与していることを発見した ( Ohnishi et al., Sci. Rep. )

ロボット(LabDroid まほろ)を用いて実験を行い、それをクラウド化するというコンセプトを提唱した ( Yachie et al., Nature Biotechnol. )

HippoシグナルがSkp2を通じてploidyの維持や造腫瘍性を抑制していることを発見した。Yapが活性化するとAkt依存的にSkp2がアセチル化され、アセチル化Skp2は細胞質に留まるため、p27が核内で蓄積して細胞周期の停止と共にploidyが上昇すると共に、FOXO1/3が分解されて造腫瘍性が上昇することを示した ( Zhang et al., Cancer Cell )

細胞内鉄濃度を制御するユビキチンリガーゼFBXL5の骨髄特異的コンディショナルノックアウトマウスを作製したところ、骨髄幹細胞の機能が喪失することが判明した。また骨髄異型性症候群の患者でFBXL5が低下していることがわかった ( Muto et al., Nature Commun. )

mTORC1の下流で機能する分子をiTRAQ-リン酸化プロテオミクス技術を用いて網羅的に同定し、その中の一つである転写因子FOXK1がCCL2遺伝子の活性化を通じて、がんにおけるCCL2の分泌およびマクロファージの誘引を引き起こしてがんを進展させることを明らかにした ( Nakatsumi et al., Cell Rep. )

mTORC1の活性化調節に関わるRagulator-Rag GTPase複合体の構造を解明し、p18がその構造のscaffoldとして機能していることを明らかにした ( Yonehara et al., Nature Commun. )

Hajdu-Cheney syndrome (HCS)は稀な遺伝病でNotch2の変異によって発症するが、これはNotch2の変異によってFbxw7によるタンパク質分解を免れているためであることをモデルマウスを作製して証明した ( Fukushima et al., Mol. Cell )

2018

マウスの大腸がんモデルで5つのドライバー変異 (Apc, Kras, Tgfbr2, Trp53, Fbxw7)を導入し、原発巣ならびに転移に関する影響を調べた ( Sakai et al., Cancer Res. )

以前からがんとの関係が取り沙汰されていたPKM2よりも、PKM1の方ががん代謝にとって重要であることを示した ( Morita et al., Cancer Cell )

われわれの開発したユビキチン化基質の探索法であるDiPIUSを用いて、Fbxw7の新規基質としてMyRFを同定し、その標的遺伝子群を解明した ( Nakayama et al., J. Biol. Chem. )

プロトルーディンに結合するタンパク質としてTMEM55を同定し、それがv-ATPaseのアセンブリに影響してmTORの活性を調節していることを明らかにした ( Hashimoto et al., Genes Cells )

自閉症の原因遺伝子CHD8に変異がある自閉症患者は痩せ型が多いとされるが、その原因は不明であった。われれわれはCHD8が脂肪分化に関わる遺伝子で、脂肪分化のマスター転写因子C/EBPβと結合し、その転写活性化を促進していることを明らかにした ( Kita et al., Cell Rep. )

われわれは以前に転写因子FOXK1がmTORC1の下流で活性化されることを証明したが、その効果は間接的であると考えられた。今回われわれはPP2AB56がmTORC1に依存的なFOXK1の脱リン酸化に関与していることを突き止めた ( Nakatsumi et al., Genes Cells )

転写因子PU.1が他の転写調節因子をリクルートしたり、本来の場所から移動させることによる影響で、初期T細胞分化における遺伝子発現調節に複雑に関わることを証明した ( Hosokawa et al., Immunity )

T細胞の運命決定を担う転写因子Bcl11bの標的因子を決定し、プロテオミクス解析によって活性に必須の会合分子を発見した。さらにBcl11bはId2とZbtb16を抑制することにより間接的にも様々な遺伝子発現を調節していることを明らかにした ( Hosokawa et al., Nature Immunol. )

2019

乳がんにおけるDTC (disseminated tumor cell) に対してFbxw7遺伝子を破壊して細胞周期を強制的に回転させ、抗がん剤でDTCを死滅させるという静止期追い出し療法の理論的基盤をマウスモデルで実証した ( Shimizu et al., JCI Insight )

肝臓特異的にFBXL5を欠損したマウスに発がん誘発剤を用いると高率にがんが発生することを発見した。FBXL5欠損によって細胞内鉄濃度が過剰となり、酸化ストレスから遺伝子変異が引き起こされていた。つまりFBXL5は有力ながん抑制遺伝子であることが明らかとなった ( Muto et al., J. Exp. Med. )

われわれが開発したDiPIUS法によってユビキチンリガーゼSCF(Fbxw7)複合体の基質としてKLF7を同定した ( Sugiyama et al., Genes Cells )

人工知能を用いて乳がん患者の大規模公開データを解析し、乳がんの予後を決定する23個の遺伝子を発見し、その発現パターンから正確に予後を予測するスコアリングシステム(mPS)を開発した ( Shimizu and Nakayama, EBioMedicine )

ヒートショック時に、Heat Shock Transcription Factor 1 (HSF1) がSGO2と結合し、それがPolIIのプロモーターへのリクルートを促進することを見出した ( Takii et al., EMBO J. )

2020


ProtrudinとPDZD8が複合体を形成し、ERとリソソーム間における膜接触部位を構築し、その間で脂質輸送が行われていることを実証した ( Shirane et al., Nature Commun. )

悪性度の高いがんではグルタミン由来の窒素代謝が大きく偏移していることを次世代プロテオミクス技術(iMPAQT法)を用いて明らかにし、その中心酵素PPATが小細胞肺がんで高発現していることを発見した ( Kodama et al., Nature Commun. )

WntレセプターであるFrizzledをユビキチン化するRNF43がリン酸化によって制御されていることを発見し、この変異によってRNF43の制御がおかしくなるとRasとの協調によって発がんに寄与することが明らかとなった ( Tsukiyama et al., Nature Commun. )

MED26によってリクルートされたLittle Elongation Complex (LEC) はPol IIによる効率的な転写終結を促進するだけでなく、3’-endのプロセッシングも促進することを見出した ( Takahashi et al., Nature Commun. )

p57は大脳の発生に必須であるが、モザイク解析(MADM法)によって、p57は細胞自律的メカニズムと細胞非自律的メカニズムによって細胞の増殖を正負に制御していることが明らかとなった ( Laukoter et al., Nature Commun. )

乳腺特異的なFbxw7コンディショナルノックアウトマウスを作製し、正常な乳腺発達のためにはFbxw7が必要であることを示した。またFbxw7が欠失した乳腺からは、一定期間が経つとヘテロな細胞集団からなる乳がんが発生することが明らかとなった ( Onoyama et al., Cancer Res. )

オリゴデンドロサイト特異的Chd8欠損マウスをMRIで解析し、微小構造や機能的連結の変化を見出した ( Kawamura et al., Mol. Brain )

Protrudin欠損マウスを作製して行動学的解析を行い、うつ様行動異常等の変化を見出した。一方で、痙性対麻痺は認められなかった ( Shirane et al., Mol. Brain )

2021

血液幹細胞特異的Chd8欠損マウスを作製し、CHD8が血液幹細胞からの分化に必須であることを証明した ( Nita et al., Cell Rep. )

老化細胞ではGLS1が高発現してアンモニアを産生し、それによって細胞内pHの低下を防いでいることを発見した。さらにGLS1の阻害薬で老化細胞が除去され、その結果として老化による異常が是正された ( Johmura et al., Science )

人工知能を用いて大腸がんの予後に関わる遺伝子を探索し、16個の遺伝子の発現で予後が決定されることを示した ( Shimizu and Nakayama, NPJ Genom. Med. )

小脳特異的Chd8欠損マウスを作製し、CHD8は運動機能には必須であるものの、自閉症様行動は認められないことを発見した ( Kawamura et al., Cell Rep. )

翻訳開始点を正確に同定するための新規手法(TISCA)を開発し、near-cognateコドンからの翻訳開始は主にeIF2に依存していることを明らかにした ( Ichihara et al., Nucleic Acids Res. )

従来non-coding RNAと信じられていたTINCRが、実は短いユビキチン様タンパク質(TUBL)をコードしており、上皮のケラチノサイトの増殖に関与していることを明らかにした ( Nita et al., PLOS Genet. )

トランスオミクス解析によってインスリンシグナル伝達の複数のレイヤーを統合し、ネットワークの特徴を調べた ( Matsuzaki et al., Cell Rep. )

2022

同一の遺伝子座から産生される二つの双子分子Kastor/PolluksがどちらもVDACと結合し、精子形成や運動に重要な役割を果たしていることを示した ( Mise et al., Nature Commun. )

腸管の+4ポジションに存在するp57+細胞は、通常時には分化細胞として振る舞うが、傷害があると幹細胞性を持つようにリプログラムされることを実証した。このリプログラミングは胎児性変化と胃上皮様変化を伴う時空間的な変化を特徴とすることが明らかとなった ( Higa et al., Nature Commun. )

HSF1のリン酸化はTRRAP-TIP60複合体を介してクロマチンを活性化し、腫瘍発生を促進することを発見した ( Fujimoto et al., Nature Commun. )

任意のタンパク質-化合物の結合を予測する人工知能「LIGHTHOUSE」を開発し、がん・細菌感染症・メタボリックシンドローム・新型コロナウイルス感染症等に有効な化合物を発見した ( Shimizu et al., iScience )

2023

mTORの下流分子をリン酸化プロテオミクス技術で探索したところ、PBX2がmTOR依存的に脱リン酸化されることを発見した ( Wada et al., J. Biochem. )

大腸がんのシングルセル解析によって、従来の幹細胞分画には増殖の速い細胞と遅い細胞があり、後者にはp57が特異的に発現していることを発見した。またこの細胞を焼灼することにより、大腸がんの進行や再発が抑制されることを実証した ( Oka et al., Cancer. Res. )

横紋筋特異的に発現するRPL3Lが筋収縮やミトコンドリア関連のタンパク質の翻訳を制御し、RPL3Lノックアウトマウスは心不全を呈することを発見した ( Shiraishi et al., Nature Commun. )

ASC-1複合体が翻訳リボソームだけでなく走査リボソームにも結合しており、走査リボソームがmRNA上を進みやすくするように補助する機能を持つことを明らかにした ( Kito et al., EMBO J. )

元々海洋生物は祖先型Keap1 (Keap1A) を持っているが、魚類において遺伝子重複によりKeap1Bが出現し、Keap1BはCul3との結合力が弱まってNrf2のユビキチン化活性が低下していることを発見した。生物の陸上進化の際にKeap1Aは失われてKeap1Bのみとなり、その結果高レベルのNrf2が活性酸素に対する防御機構として働いていることがわかった ( Yumimoto et al., Sci. Adv. )

FOXK1の肝臓特異的ノックアウトマウスを作製したところ、高脂肪食による脂肪肝炎が有意に抑制され、発がん率も減少した ( Fujinuma et al., Cell Rep. )

小細胞肺がんにおいてプリン合成のサルベージ経路とde novo経路を6-MPとメソトレキセートで抑制し、さらにグルタミン供給を下げると強い抗がん作用が得られた ( Kodama et al., Cell Rep. )

T細胞の正負の選択に際し、T細胞レセプターからの漸増的なシグナルはRSKのリン酸化の過程でデジタル情報化されることが判明した ( Funasaki et al., iScience )

2024

自閉症患者における点突然変異の影響を予測し、その実証実験を行うことによって、自閉症の発症メカニズムが複数あることを発見した ( Shiraishi al., Mol. Psychiatry )

脳が酸性に傾く精神・神経疾患モデル動物を多数発⾒し、多様な疾患にまたがる認知機能障害の脳内メカニズムを解明した ( Hagiwara al., eLife )

c-Mycのユビキチン依存性分解を司る酵素として従来のCRLFbxw7に加えてCRL2KLHDC3を発見した ( Motomura al., Oncogene )

膵がん患者からオルガノイドを樹立し、そのクラス分けと臨床転帰の予測を行った ( Matsumoto al., J. Gastroenterol. )