Exit and Re-entry of the Cell Cycle

胞周期は,G0からG1,S,G2,Mの各期を回る周期である。G0期は静止期と呼ばれ,細胞分化・老化・アポトーシスなどのさまざまな生命現象のゲートウェイとなる時期であると考えられている。G0期制御の破綻は癌などの深刻な疾患を引き起こす。しかしながら,細胞周期からG0期へのexit及びre-entryのメカニズムは長らく不明であった。

本年我々は,このG0期制御のメカニズムを提唱する論文を相次いで発表した。小野山らはユビキチンリガーゼの一つであるFbxw7がMycの分解を制御することにより,リンパ球の分化段階におけるG0期へのexit,およびre-entryに極めて重要な働きを担っていることを明らかにした (J.Exp.Med., 204:2875-2888, 2007) 。Fbwx7のリンパ球特異的ノックアウトマウスはリンパ球の分化に異常を来す。長期的にはリンパ腫を発症し,早期に死亡する。

一方,洲﨑らはG0-G1移行期における細胞周期の負の制御因子であるp27の分解メカニズムの一端を明らかにした。p27はG0期において核内に蓄積しCDK活性を抑制しているが,G0-G1移行期に細胞質へ移行しそこで分解を受ける。洲﨑らはこの輸送がG1早期サイクリンであるサイクリンD2に依存してることを明らかにし(Mol.Cell.Biol., 2007),これまで分かっている複数の核外移行パスウェイを統合した新しいモデルを提唱した(Cell Cycle,6:3015-3020,2007)。

以上の知見は,これまでほとんど踏み込まれてこなかったG0期制御のメカニズムの解明に向けた,大きな第一歩である。